食品工場のデータ偽装と帳票の原本管理

厚労省の『不適切統計問題』は記憶に新しいと思います。毎月勤労統計で、不適切な調査が長年続いていたみたいですね。
報道によれば、1996年から全国3万3000事業所を調査すべきところを3万事業所しか調査しないなどの不適切な調査が行われていたといいます。また、従業員500人以上の事業所は全数調査がルールだが、2004年からは、東京都内の1400事業所のうち3分の1だけを抽出していたようなのです。

意図したことなのか、それともついうっかりなのか。いずれの場合も考えられますが、自分の周りでも起こり得ることだと認識する必要があります。ということで、本日のお題は『食品工場のデータ偽装』について、です。

パソコンの清書は必要なのか?

私が工場点検に訪れていた際、エクセルなどでキレイに清書された表が提出された場合は、それを一旦脇に置いていました。その代わりに、現場の方が実際に記入した帳票を確認するようにしていました。
金属検出器・温度計・重量を量る秤などは、測定した数値が測定時に印字されるタイプの場合は自動印字された結果を帳票に貼り付け
ておいたものを直接確認していました。

米国の某企業の食堂ではスープの加熱・冷却の温度は、自動で記録されるシステムが導入されているところもあります。しかも、加熱結果がきちんと記録されていないと、次の工程の冷却結果を測定出来ない仕組みになっているのです。
日本では作業中に温度記録をつけることが多いので、帳票が汚れることを嫌い、後からまとめてつけている現場を確認するケースが存在します。さらには、現場で一度つけた帳票を、「清書」と称して書き直している作業を行っている場合もあります。

この作業は本当に必要なのでしょうか?仕事の効率を考えても、あまり生産性のある作業とは言えません。何より、データの入力ミスが考えられます。
現場で作業員がその都度記録した原本こそ、守られなければいけないエビデンスです。

帳票の保管と管理

それでは、現場で作成した帳票の保管はいつまで行うべきなのでしょうか。
答えは、少なくとも製造した商品の「賞味期限+20日程度」を目安にしましょう。O-157のように潜伏期間の長い菌が存在している
場合もあるので、商品の安全性を証明するために必要な期間だと思います。

帳票の中でも、加熱・冷却・出荷前検品の細菌検査の結果などについては、確実な保管が必要です。ペーパーレス化が進んでいますから、帳票を紙のままではなく、パソコンで管理することが多くなっているでしょう。

その際、帳票をスキャンしてPDFなどで保管している場合は全く問題が無いのですが、先ほどのように帳票の数字をエクセル等に打ち直しすのはいただけません。データとしては読みやすいのですが、数値を改竄していないかどうかを確認する事は出来なくなってしまうからです。

また、昨今では、タイムカードを打刻したときに、打刻した時間が手元のカードに記録されず、打刻した方が時間を確認できないタイプのものが多くなってきていますが、自動記録式の場合であっても手元に印字記録が残るタイプの方が労務管理上も好ましいのではないでしょうか。打刻した方が確認することがデータ偽装の抑止につながります。

タイムカードのデータを、パソコンで修正するのは非常に簡単なことです。実際、ワードなどでも文章の修正記録が残る場合がありますが、その修正記録を修正する事はさほど難しくありません。

品質管理において、データを記録することは大切なのことです。とはいえ、手元に保管しておく帳票は膨大な数になるでしょうから、きちんとその運用方法まで考えておかなければなりません。

≪衛生管理・品質管理でお悩みの食品製造業・飲食店のオーナー様必見!「衛生管理・品質管理のポイント」を解説したレポートを進呈中です。≫

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です