『3分の1ルール』って何?


 昨年、日経新聞で『食品ロス元年』という言葉が使われると、それからいろんなところで『食品ロス』という単語を見るようになりましたね。『食品ロス』というのは、本来はまだ食べられるにもかかわらず、食品が捨てられてしまっている昨今の状況のこと。

 つい1ヶ月前は節分でしたが、作り過ぎて余った恵方巻が産業廃棄物として捨てられて、家畜の飼料になっているというニュースも話題になりました。農水省がちゃんと廃棄削減しろよって発表するくらいだから、社会問題といっても過言ではないでしょう。
ほかにも、2016年に大手カレーチェーン店(CoCo壱番屋)を展開する壱番屋の廃棄カツが、不正に横流しされていた事件もありましたね。今に始まった話ではないんです。

 なんでこういうことが起きてしまうのか、考えられる原因のひとつに、食品流通業界の『3分の1ルール』があると思います。最初に言っておくと、これは法律でもなんでもなくて、単なる商慣習にすぎません。

 賞味期限を3等分して、賞味期限の手前の段階、つまり製造してから3分の2が経った時期に小売側の「販売期限」が設定されています。さらに、販売期限の手前にも「納品期限」が設定されていて、目安は製造してから3分の1が経った時期になります。

 例えば、あるカップ麺の賞味期限が180日と仮定してみましょう。3月1日に製造したとすると、賞味期限は半年後の9月1日になります。メーカーや卸売側は、製造から60日以内(5月1日まで)にコンビニやスーパーなどの小売側に納品しなければならなくて、仕入れた小売側はさらに60日以内(7月1日まで)に販売しなければならないということです。
(実際は、賞味期限ごとにもっと細分化されて決められているところもあります。僕が担当していた生協などが良い例でしょう。)

 それぞれの期限を超えてしまうと、返品や廃棄の対象になります。賞味期限ですら、あくまで目安に過ぎないのに、さらにその手前で商品を動かしているということですよ。

 賞味期限というのは、そもそも「おいしく食べられる目安」が設定されているだけで、それを過ぎたからといって腐ったり変色したりして、一切食べられなくなるというわけではありません。その「腐ったり変色したりする品質劣化の目安」が、消費期限と呼ばれるものです。
 だから、カットねぎのように作ってから2,3日しか品質が維持できないものは、『消費期限〇〇.△△』と表示されるのです。

 世界には、今日明日のご飯すらどうしようかという環境の中で暮らす人もいます。
 私たちは、ある意味、異様なまでの厳格な管理の下で暮らしているのだということを、心に留めておきたいですね。

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