『神様からひと言』荻原浩著、光文社文庫

街を歩いていると、段ボール箱をパンパンに積み込んだ軽トラックをよく見かけます。うず高く積まれた箱のほとんどは『Amazon』や『rakuten』の荷物です。ネット通販で揃わないモノはないんじゃないかと思えるくらい、年々取扱品目の数が増えていて、家から一歩も出なくたって生活ができてしまうような時代です。丸1日家の中にいても全く苦にならない僕からすれば、ほんと便利な時代になったなぁと思います。昔と違って、注文の品は次の日か都心部だったら即日届くしね。

一方で、たまに行ってみたくなる、というより意識的に「行くようにしている」のが街の本屋さんです。(時代の流れもあって、閉店する本屋さんが多いのは事実なんですが・・・)パラパラと本の中身を読むこともできるし、知らなかった作家の本に出会えたり、タイトルを見て思わず買ってしまう「ジャケ買い」ができるからなんです。これはこれですごく面白いんですよ。だから、買い物はとてもゆ~っくりになります。

この『神様からひと言』もまさにそれでした。ピンポイントで買い求めたわけではありません。手に取るまでは、作家の名前も知らなかったですしね。買った理由といえば、たまたま店頭に平積みされていて、たまたま著者が僕の親友のひとりと同じ名前で、たまたま物語の主人公の勤め先が食品メーカーだったからです。

この本が世に出たのは2002年なので、それからもう20年近く経つわけですけれど、会社組織の実態ってそんなに変わってないんじゃないかなぁと思いました。世間では「働き方改革」なんて言っているけど、むしろ働きにくくなってる感すら受けますし・・・

馴染みのある食品業界だからこそ想うところもあって、フィクションのようで実は本当の話なんじゃないかと感じる箇所が多かったですね。サラリーマンあるあるの話も楽しくて、主人公の「会社っていったい何?」という投げかけに、先輩が「おでん鍋といっしょ。狭いとこでぐつぐつぐつぐつ煮詰まってる」と返すやり取りは思わず、うんうんとうなずいてしまいました(笑)

読んでいたら、10年くらい前に僕が思うように行かなくて愚痴ばっかり言っていた時に、それこそ先輩に「必ず斜め後ろから見ている人がいるから腐らずにやれ」と言われたのを思い出しました。その先輩も別の先輩から教わったと言っていましたが、すごく良い教えだなぁと改めて感じましたね。

勧善懲悪で気分爽快!というより、確かな現実を抑えて、少しの希望を残しながら先に進んで行くストーリーがとても良かったです!

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